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娘とともに自分を見失いがち。
へんな本を読んだ。
エリック・ゼムールというフランス人が書いた「女になりたがる男たち」という本だ。
去年あたりフランスでベストセラーになっていたのは知ってたんだが
原題はLE PREMIERE SEXE(第一の性)とかいって
ボーヴォアールの第二の性をもじってるんだろうけど、
そのセンスもアレだし、
「戦争よりも平和、力よりも優しさ、命令よりも理解。
先進国ではいまや、女性的な価値観こそがスタンダードとなった。
テレビではゲイのタレントが大活躍し、ガリガリのモデルが「理想の女性」となり
男女の差異はどんどん縮小している。
しかし、その先に待ち受けているのは「文明世界の滅亡」かもしれない・・・。」
というアオリ文句も「おっさん、ベタだなあ」と思って読書リストに入れて無かった。
しかし、何故か近所のシケた公民館のシケた「市民のリサイクル図書」の棚(いつもへんなビジネス本とか新興宗教の本とかしかない)に新潮新書2008年1月発行の訳書が置いてあったのでつい持って帰って読んでしまった。
読んでみたら予想に反して面白かったのだけれど、
これはなんだか危険な書物だよ、と思ってモヤーンとした。
内容をものすごく乱暴にまとめると
1968年革命世代の母親に育てられたフランスの若者達(とくに男)はその母親の暗示によって「男性特有」の思考と精神を虚勢されてしまった(この働きをゼムール氏は全体主義的なフェミニズムと呼んでいる)。
今日び文化の花形としてもてはやされるのは、ゲイ好みの性差を消したモデルばかりであり
ちっとでも「英雄、色を好む」的な態度を取ろうものなら社会から
「マっチョ」とレッテルを貼られ、集中砲火をあびてしまう。
女性は、その生物的本性から、配偶者に出来るだけ家庭にとどまることを要求したが
その野望通り「カップル」であることが最大の美徳となった結果、
男は家庭における権力を失い、皮肉にも権力にともなう「責任」を放棄するようになった。
また、男性にとってセクシャリティと権力は常に比例するものなので、
機能不全に陥った男性はこれからもこの調子なら家庭でも社会でも益々勃起しなくなるし、
「権力」の不在は「政治」の不在を招き(もう招いている、と言っている)、やがては文明を退廃させるだろう、フランス社会全体が「女性化」してしまったのだ。
というはなしだ(すみません、酷いまとめだ。興味のある方は読んでください)。
本人が「私は心理学者でも哲学者でもない」
と断ってるようにあくまでもいちジャーナリストによる「エッセイ」という体裁をとっているのだが
いかにも雄弁なフランスのおっさんの諧謔が効いてる文章で
ラカンやジラール、バダンデールをひいて来たりしてて、インテリ好み。
論理の切れ味も鋭いし、その展開自体が面白いのでつい籠絡されそうになるけんど
とても勉強になると同時に「やっぱり、なんかおかしい」と極東アジアのいち妊婦(産休中)として
ぶわぶわ、もやーとした。
面白かった点。
私はなぜ、移民の若者が移民排斥を訴える極右政党に投票したり、
デモをするリベラルな白人に暴行をしかけたりするのか
その心性がイマイチ理解できなかったのだが、
そこのところを「オカマ」に対する
性的嫌悪が呼応しているというのはありうる、なるほどねと思った。
イスラムの人とか、リアルにマっチョ世界に生きる人達にとって、
「女性化」したフランスは耐えがたいオカマ社会に見えるらしい。
父性欠如の問題はヨーロッパ全土に広がるネオ・ナチだとか若者の右傾化なんかにも関係あるんだろうな。ここはヒザを打った。
でもやっぱり
納得しかねる点は
出生率の低下(=国力の低下)をすべて「フェミニズム」のせいにしている点だな。
ゼムール氏は35歳以下の世代の虚勢された性行動(具体的には常にカップルでいることを尊重し、親の持ち物である家でセックスし、それを親も許している現象など)を
自分の世代(まだハンターとしての男性性を保有していると主張している)と比べて
軟弱だと繰り返し嘆いているが、
じつはその断絶じたいが出生率の低下にさらに拍車をかけているんじゃないかしらん?
男性性とは直接関係ないけれど
日本の政治家・経営者なんかみてても「若い世代」の貧困に対する想像力のなさ
には男と女の間に横たわる深くて暗い川よりもさらに深い「断絶」を私などは感じてしまう
のだが。
また、氏はフェミニズムを「女が男なみにふるまうこと」と断言しているが、まずこのへんの理解が
私が思っているのとはぜんぜん違う。
私にとってのフェミニズムはあくまで「隷属からの開放」だな。
DVが怖い、レイプされて殺されるのが怖い、という恐怖への隷属からの開放。
それををめざす運動だと思ってるんだが。
フランスはDV率が日本より高いというけどそのへんどうなんだろうか。
がしかし、
こういう本が5万部売れて、テレビでもおおいに議論されるという土壌はやっぱりいいな、と
は思った。
さて、
市の主催する両親学級で乳房のついた妊婦スーツを試着すれば、
前回のブログにも書きました通りおむつも縫っちゃう
うちの配偶者は、ゼムール氏の云うところの典型的な虚勢された世代の「パンパース・パパ」ということになる。間違ってもジャン・ギャバン系(日本でいったら本宮ひろし系?)の「マっチョ」ではないなー。
ゼムール氏によると、女性は自分らの望むように男性を虚勢したものの、
結局、勃たない男には満足できず虚勢されてない男に惹かれる運命にあるらしい(本当だろうか?そんなにゼムール氏はもてるのだろうか)のだが
私は昔から「男らしい」男の人は苦手で、友達ならいいけれど、恋人には選ばなかった(というか選ぶほどもてたことないが)、結婚するなら「理解しあえる」人が良くて「男なんだからしょうがない」
と言う人は絶対嫌だとおもってそれを配偶者選びの基準にしていたな。
これは秘密を許さないという点でゼムール氏のいうところ女性の「全体主義・ファシズム」的な欲望なんだって。
出産に関しても立ち合いするのが「当然」だと思っていたのだが
落ち着いて周りの男性の声をきいてみると
じつはいろいろなんだなあ、という事が最近分かったのです。
★「男性 その2へツヅク」
ゼムールさん
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