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娘とともに自分を見失いがち。
妊娠6週間めには、エコーで赤児の姿を見せてもらえる。
それまでは、体調が悪いだけでお腹のなかになんかいると言われてもあまり実感が沸かないかんじだっただ。
妊娠確定するときに胎嚢という赤児の入ってる袋の写真を見せてもらったが
その時点では月のクレーターみたいな穴が開いているだけで、まだ生き物という感じがしない。
それが、たった2週間経った後にもう一度腹の中を覗いてみると、頭でっかちだが、きちんと四肢の生えた生物がじたばたじたばた動いているのが見えるのだからたいしたもんだ。
その時の驚きといったら、隣で「をおー」と声をあげていた配偶者(既につわりで身体が言うことをきかず、検診についてきてくれた)にも忘れられ経験だったのではないかしらん。
モニターに映し出された赤児は人間というよりもミジンコそっくりで、
手足を振りながら身体全体を旋回させている動きはゾウリムシそっくりで
およそ知性を感じさせない感じなんだが、「なんてかわいらしんだろうか!と思いわたしはしやわせな気持ちになったよ。
そういえば中学1年生の時、理科が得意な訳でもないのに微生物にハマッタ事があって、
近所の池の水を掬ってきては顕微鏡で観てスケッチしたりしていた(今でもそらでミジンコやツボワムシの絵が描けます)。
なにがそんなに私のこころを捕らえていたのかというに、
微生物が植物なのか動物なのか生きているのか死んでいるのかちょっと判断しかねる存在だったからなのだ。
4ヶ月に入るころには、腹のなかのエイリアンもすっかりいっちょまえに人間の姿になってしまったのだが、
妊娠初期の頃は腹のなかで我が児がどんな姿をしているのか毎日気になって気になって仕方なく、
ちっとでも調子の良い時はネットやら本やら図書館でその手の資料を漁って自分の暗い腹の底に思いをはせていた。
受精した胚はあはじめ「胎芽」と呼ばれる分類不可能な状態から両生類、爬虫類、哺乳類と
太古からの進化の歴史をなぞるというが、そんな変身が自分の腹で起こっているかと思うと
なんだか焦るような気持ちになるのだ。今はまだ尾の生えたウーパールーパーかな、エラはもう消えて指は分かれただろうか、と想像しては「うう、見たい」と身もだえしていた。
もし自宅にエコーの機械があったなら、毎日(毎分?)画面に映し出して成長を確認しないではおれなかっただろう。
誰の子でもない自分の子がいつから「人間」になるのか私が見届けなければ!
とおかしな責任めいたものを感じていたのだけれど、
なんぜそんな風に思うかというに、「スゲー変身だ!」と単純に生命の神秘に感嘆する一方で、
妊娠という事実が「人間はいつから人間になるのか」という大問題にヒントを与えてくれるような気がするからなのだった。
昨年くらいまで、かなり本気で人間はいつから植物でも動物でも無く「人間」になるのだろうか、
というその境めのあたりにロマンというか可能性を勝手に感じていて、
それはこないだやっと提出した論文のモチーフにもしていた。
「人間は人間を殺してはいけない」というタブーは一見全人類共通のタブーのように見えるけれど
「人間は人間の仲間である人間を殺してはいけない」に変奏され、あげくのはてには人間は人間を「人間以下、豚野郎」とみなしたとたんに殺せるようになるという横滑り問題に一石投じられないかと思ってさ。
もしか「人間」の定義がもっともっと曖昧になって植物や動物、さらには鉱物なんかとの境目が流動的になったら生命倫理の限界みたいな問題に関わってくると思ったから興味があったのさ。
現行の法律では「産まれる」以前の存在は一個の人間としてカウントされない(そういえば最近乳幼児の事件被害者を0.5人とカウントして問題になった大学の先生がいたな)。
人工妊娠中絶も22週までは母体の安全を保護するという名目で合法的に実施される。
しかし、エコーとして視覚化されたことによる倫理感の変化って確実にあるんじゃないかなあ。
いままでは闇の中でのみ起こっていた生の姿が見えてしまうということ、
産声をあげた瞬間から「この世」がはじまるのであればこの世では起こりえない種を超えた変身が文字通り「見えて」しまうインパクトはやはり大きい。
それこそさっき書いたようなポータブル・エコー装置の普及も近い将来実現するのではないかしら。
それで命の値が上がるのか下がるのかあんまり良く分からないが(自分のホームページやミクシィ上でエコー映像をアップしている妊婦さんを見かけたりすると、そんな無防備に自分の腹のなかや胎児を晒していいのかい?!と複雑な気分になる)
望まない妊娠に対する警戒意識が男女ともに高まるといいなとは思う。
結局、うちの子がいつから人間になったのかは分からなかったなあ。いや、まだ人間になってないのかもしれぬな。
ただ、毎日お腹のなかで暴れまくって
(うちの子は助産師さんが驚くほど動きまくる元気な子で、最近の私はド根性ガエルのひろしのように赤児にひきづられることがよくある)おかあちゃんを当惑させるので「生きてる」のは随分前からまったくあきらかだと思うな。